水なし印刷の前に

オフセット印刷では、基本的にCMYKの4色を重ね合わせて絵柄を構成しているので、印刷データを4つの色に分解し、4つの版を作ることになります。
この時、オフセット印刷の版は凹凸などがない平らな版となっています。線画のある部分とない部分を分けるために、「水あり印刷」では「湿し水」という水を必要とします。この「湿し水」には、人体にとって有害な成分を含む薬品(エッチ液[添加剤]やIPA[補助剤]等)を使用しているため、この湿し水を使わない印刷、つまり「水なし印刷」が環境に優しい印刷として注目を集めているのです

水なしでどうやって印刷するの?

水なし印刷の基本構造は、一般的な水ありのオフセット印刷と同じですが、湿し水の変わりにシリコンゴムの層がその役目を務めます。

水なし印刷とは、などの有害物質を含む湿し水を使わない印刷方法です。湿し水の代わりをシリコンゴム層が努めます。 このシリコンゴムの層は、湿し水と同じようにインキをはじくので、画線部分と非画線部分を区別して印刷することが可能になります。

水ありの一般的なオフセット印刷では、湿し水を大量に使用・廃棄することで環境汚染の一因となってしまいます。しかし水なし印刷なら余分な廃棄物を出すことがないので、人にも環境にも、つまり地球にとって優しい印刷と言えるのです。

水なし印刷では廃液処理も環境にやさしい

一般的なオフセット印刷の場合、現像処理の廃液は「特別管理産業廃棄物」として回収が義務付けられています。水なし印刷の場合は有害な廃液がほとんど出ない現像方式で、現像処理後の排水は下水に流すことが可能です。

バタフライマークが使用可能

このマークは、水なし印刷で印刷された印刷物のみに記載することができるロゴマークで、「バタフライマーク」と呼ばれています。

このマークのモチーフの蝶は、「オオカバマダラ」という蝶で、環境の変化にとても敏感な蝶です。この蝶は、環境のリトマス紙とも呼ばれるほど環境の変化に敏感で、公害や開発の影響で年々その生息地域が少なくなっています。

環境問題を無視して社会活動・貢献をすることは、もはや避けて通れない時代になりつつあります。

※バタフライロゴについてはのくわしい説明は、

水なし印刷協会WPA:バタフライロゴについて

をご覧ください。

水なし印刷のメリット

仕上がりが高品質

水なし印刷では、水を使わないために、にじみが原因で発生するドットゲイン変調による色の変化を解消することができるため、薄紙でもインキが水でにじんだりせず、印刷物の色が安定します。

また、凹凸の大きい上質紙やマット紙、和紙の場合でもアミ点を確実に再現し、高精細で美しい仕上がりの印刷が実現できます。

さらに、アミ点のひとつひとつがくっきり再現できるので、通常の印刷より黒の濃淡がはっきりし、色がはっきり表現されます。

紙伸びが発生しにくい

水を使わないことで、紙が水分で膨らんでのびるいわゆる「紙伸び」が発生しにくくなります。紙が伸びると各版の印刷位置がずれる現象、つまり「見当ずれ」がおきにくいので、印刷物の質の向上につながります。

水なし印刷のデメリット

非常に優れた印刷方式の水なし印刷ですが、メリットがあればデメリットもあります。しかし現場で対応できることも多いので、知っておけば印刷方法を検討する際の助けとなるでしょう。

ピッキングがまれに発生する

ピッキングとは、印刷機の胴から紙が離れる際に、紙の表面がめくれて胴部分にインキと共に残る紙むけのことをいいます。水なしのインキは若干硬めのインキのため、粘着力によってまれに発生することがあります。

紙の選択の問題であることが多いので、場合によっては紙の再検討を考慮する場合が考えられます。

静電気がおきやすい

水を使わないことで、版のシリコン層とブランケットのゴムが摺れ、静電気が発生しやすくなります。静電気が発生すると、紙が静電気を帯びるために紙のそろえが悪くなり裏付き(ブロッキング)が発生する原因になります。

色が多く使われているような重い絵柄の印刷物の場合、印刷前の調整や検討が必要になる場合があります。

ゴースト絵柄が若干苦手

真ん中が抜けていて周囲がベタのような図柄を印刷する場合、印刷方向に対して狭い部分が濃く印刷されてしまうような現象をゴーストといいます。水あり印刷でもゴーストは出ることはありますが、インキの量だけでなく、湿し水の量で調節することが可能です。水なし印刷の場合は、水がないためにインキの量だけで調整することになるため、ゴースト絵柄の対策が若干苦手だといわれることがあります。